社会人で簿記論・財務諸表論を受験する場合、ほとんどの人が同じ壁にぶつかります。
時間が足りない。
平日は1〜2時間。
繁忙期は勉強ゼロの日もある。
休日も思ったほど伸びない。
だからこそ、
・とにかく範囲を終わらせようとする
・年度をどんどん進める
・問題集を増やす
こういう動きに出やすいです。
でも、時間がない人ほど削るべきなのは「量」ではありません。
削るべきなのは、完成度が低いまま範囲を広げる勉強です。
時間がない人がまずやめるべきこと
最初に全体像を整理します。
時間が足りない社会人がやめるべきなのは、次の5つです。
- 完成度が低いまま次の年度へ進むこと
- 分析せずに問題を回すこと
- 教材を増やして安心すること
- 低頻出論点に時間をかけすぎること
- インプットに寄りすぎること
共通しているのは、復習が浅いまま前に進もうとすることです。
時間がないなら、範囲を広げるより完成度を上げる。
これが軸になります。
① 完成度が低いまま範囲を広げること
過去問は何年やるべきか。
この問いに対しては、年数より完成度が重要です。
目安としては、直近5年分をその80~85点以上で安定させること。
60点前後の状態で次の年度に進むより、
同じ年度を3周以上回して精度を上げるほうが効果は大きいです。
年度数の考え方については、こちらで整理しています。
簿記論の過去問は何年分必要?合格者が解説
重要なのは、
・ケアレスミスが減っている
・処理スピードが安定している
・解法が固定されている
この状態まで持っていくことです。
特に、前回合っていたのに今回は間違えているところは要注意です。
解き終わった解答用紙は必ず取って置き見比べるようにしましょう。
範囲を広げること自体が悪いわけではありません。
ただ、完成度が低いまま広げると、できない部分が薄く拡散します。
時間がない社会人は、広げる前に固める。
ここを外すと、いつまでも点数は安定しません。
② 分析せずに回すこと
「解いた」「丸つけした」「終わり」。
これでは復習になりません。
間違えた問題や、少しでも迷った問題は、原因まで掘る。
・どの理解が足りなかったのか
・どこで判断を間違えたのか
・手順が曖昧だったのか
ここを言語化しないと、同じミスを繰り返します。
回す回数を増やすより、
1回あたりの分析密度を上げる。
間違えた問題は翌日にもう一度解く。
次の周回でも必ず触れる。
できるまで残す。
これを徹底するだけで、年度を増やすよりはるかに効果があります。
③ 教材を増やして安心すること
不安になると、人は教材を増やしたくなります。
「他校の問題集もやったほうがいいのでは」
「模試をもっと受けたほうがいいのでは」
でも、与えられた過去問や模試でその点数以上が安定していない状態で、教材を増やす意味は大きくありません。
基本は、
・配布された模試や過去問
・今使っている問題集
この範囲で完成度を上げることです。
教材を増やすと、
・復習が薄くなる
・周回数が減る
・どれも中途半端になる
時間が限られている社会人ほど、この状態は避けるべきです。
増やす前に、今の教材で安定して点数が取れているか。
ここを基準にしてください。
④ 低頻出論点に時間をかけすぎること
時間がない人ほど、
「ここも出たらどうしよう」
「この論点、出たら怖い」
と不安になります。
その結果、出題頻度が低い論点に何時間もかけてしまう。
でも考えてほしいのは、配点と出題傾向です。
出題可能性が低い論点を完璧にしても、
本試験の点数は大きく動きません。
一方で、頻出論点の取りこぼしは致命的です。
優先順位はこうなります。
- 頻出論点で安定してその点数以上
- 標準論点で落とさない
- 低頻出は触れる程度
低頻出をゼロにしろ、という話ではありません。
ただ、時間が足りない状態で深追いしない。
計算であれば、
・何度も出ている処理
・基本パターンの応用
ここを取りこぼさないことのほうが、はるかに合格に近づきます。
⑤ インプットに寄りすぎること
「理解が浅い気がする」
「もう一度テキストを読もう」
こうしてインプットに戻る。
これ自体は悪くありません。
ただ、通常期の理想は、インプット:演習=6:4程度。
インプットが軸ですが同じくらいアウトプットも行います。
問題を解いて、
・どこが分かっていないかを炙り出す
・必要な部分だけインプットに戻る
この流れが効率的です。
インプットを増やすと何が起こるか。
・やった気になる
・理解した気になる
・でも点数は安定しない
計算科目は、理解より再現性です。
同じ処理を、同じ手順で、安定してできるか。
そのためには、読む時間より解く時間を増やすほうが効果は高い。
独学か講座利用かで悩んでいる場合は、勉強スタイルの違いも含めてこちらで整理しています。
簿記論は独学とスタディングどちらがいい?合格者が本音で比較
講座を使うにしても、
講義を増やすより演習の完成度を上げるほうが優先です。
通常期と直前期の回し方
時間配分は時期によって変わります。
通常期
- インプット6:演習4
- 問題集を回しながら弱点補強
- 分析を丁寧に行う
ここで完成度を上げる。
直前期
直前期は、ほぼアウトプットです。
- 過去問の回転
- 模試の解き直し
- ミスの潰し込み
理論は別枠で回転させる。
模試は受けることより、復習の深さが重要です。
間違えた問題だけでなく、少しでも迷った問題も掘る。
なぜ迷ったのか。
どこで判断が止まったのか。
そこまで詰める。
点数より分析です。
これが直前期の質を決めます。
復習が足りない人の思考パターン
時間がない人ほど、こう考えます。
「まだ全部終わっていない」
「この年度も解いていない」
「この問題集もやっていない」
でも本当に怖いのは、
「終わらせたけど、できない」
という状態です。
範囲が広いことより、再現性が低いことのほうが危険です。
本試験では、
・初見の問題も出る
・見たことがあるけど形を変えられる
そのときに必要なのは、
理解の広さよりも、基礎処理の安定です。
復習が足りない人は、
- 同じミスを繰り返す
- 点数が毎回ブレる
- 年度によって出来不出来が激しい
という特徴があります。
逆に、復習が足りている人は、
- 点数が大きく崩れない
- 難化しても基礎で耐えられる
- 解くスピードが安定する
時間がないなら、なおさら後者を目指すべきです。
簿財同時受験の優先順位
簿記論と財務諸表論を同時に受ける場合、
軸は簿記論の計算です。
財表計算は、簿記論の延長で処理できる部分が多い。
そのため、
- 簿記論の計算精度を上げる
- 財表は特有論点と理論を別枠で積む
この構造で十分戦えます。
同時受験の順序や考え方については、こちらでも整理しています。
税理士試験は簿記論と財務諸表論どっちから始める?同時に始めるべき理由を同時合格者が解説
財表の計算を別物として大量に追加するより、
簿記論の精度を上げるほうが効率はいい。
時間がない社会人は、軸を増やさない。
これも大事な視点です。
復習を軸にした具体的な行動
ここまで抽象的な話をしてきましたが、行動に落とします。
1. 年度を増やす前に確認する
- その年度でその点数以上を安定して取れているか
- ケアレスミスの種類が減っているか
- 処理手順が固定されているか
これがクリアできていないなら、増やさない。
2. 間違えた問題を翌日に解く
間違えた問題、迷った問題は翌日もう一度。
その場限りにしない。
3. 分析を言語化する
「計算ミス」ではなく、
- なぜその数字を書いたのか
- どの判断を誤ったのか
- どの理解が曖昧だったのか
ここまで落とす。
4. 教材を増やす前に点数を見る
今の過去問や模試で安定してその点数以上が取れているか。
取れていないなら、追加は後。
講座選びや学習環境を見直したい場合は、こちらで比較しています。
スタディング vs TAC vs 大原|簿記論・財務諸表論はどれがおすすめ?合格者が比較
環境を整えることは大事ですが、
完成度を上げることの代わりにはなりません。
まとめ
時間が足りない社会人がやるべきことは、
新しいことを増やすことではありません。
・年度を増やす前に完成度を見る
・分析を徹底する
・与えられた教材で安定させる
・演習を軸にする
削るのは、量ではなく無駄な広がりです。
復習が足りないまま前に進む限り、
どれだけ時間を増やしても不安は消えません。
逆に、復習が足りている状態を作れれば、
時間が限られていても合格可能性は上げられます。
時間がないからこそ、完成度。
ここを軸に、勉強を組み直してください。
私がスタディングで同時合格した体験談は以下の記事にまとめています。
