税理士試験について調べていると、「財務諸表論だけ受験するのはありなのか?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
税理士試験は5科目合格が必要な試験であり、合格までに数年かかることも珍しくありません。そのため、どの科目をどの順番で受験するのかという受験戦略はとても重要になります。
特に最初の科目としてよく検討されるのが、簿記論と財務諸表論です。この2科目は出題範囲が重複している部分も多く、多くの受験生が同時に受験しています。
その一方で、「まずは財務諸表論だけ受験する」という受験戦略を考える人もいます。仕事が忙しく勉強時間が限られている場合や、理論科目に慣れておきたいという理由から、1科目だけ受験するという選択をするケースもあるためです。
結論から言うと、財務諸表論だけ受験するのはありです。
ただし、基本的には簿記論と財務諸表論を同時に受験する方が効率的なケースが多く、初学者にはあまりおすすめできない場合もあります。
この記事では、財務諸表論だけ受験する場合のメリットやデメリット、どのような人に向いているのかについて解説します。
結論:財務諸表論だけ受験はあり。ただし基本はおすすめしない
結論として、財務諸表論だけ受験すること自体は特別な戦略ではありません。
受験生の状況によっては、1科目だけ受験するという選択も十分あり得ます。
ただし、基本的には簿記論と財務諸表論を同時に受験する方が効率が良いことが多いです。
理由は主に次の3つです。
- 簿記論の計算知識が財務諸表論の理解につながる
- 簿記論と財務諸表論は範囲が重複している
- 同時合格できれば受験期間を短縮できる
簿記論と財務諸表論は、税理士試験の中でも特に関連性が高い科目です。
簿記論で学ぶ計算内容は、財務諸表論の計算問題にもそのまま出てくることが多いためです。
そのため、多くの受験生がこの2科目を同時に勉強しています。
ただし、これはあくまで勉強時間を確保できる場合の話です。
社会人受験生などで勉強時間が限られている場合は、最初から2科目を同時に勉強するのが難しいこともあります。
そのような場合には、財務諸表論だけ受験するという戦略も選択肢の一つになります。
また、簿記論にすでに合格している場合は、財務諸表論だけ受験するという戦略は比較的取りやすくなります。
簿記論の知識がある状態であれば、財務諸表論の計算部分は理解しやすくなるためです。
財務諸表論だけ受験する人はいる?
税理士試験は、1年に受験できる科目数に制限がありません。
そのため、受験生によって受験戦略は大きく変わります。
例えば、次のような受験パターンがあります。
- 簿記論だけ受験
- 財務諸表論だけ受験
- 簿記論と財務諸表論を同時受験
特に社会人受験生の場合、仕事と勉強を両立する必要があるため、最初の年は1科目だけ受験するケースも少なくありません。
税理士試験は必要な勉強時間が多い試験です。
そのため、勉強時間が十分に確保できない場合は、まず1科目に集中するという戦略を取る人もいます。
税理士試験の勉強時間については、次の記事でも詳しく解説しています。
勉強時間の問題を考えると、次のような人は1科目受験を検討することが多いです。
- 社会人で勉強時間が限られている
- 税理士試験の勉強が初めて
- まずは1科目合格を目標にしたい
このような場合には、財務諸表論だけ受験するという戦略も現実的な選択肢になります。
財務諸表論だけ受験するメリット
財務諸表論だけ受験する場合には、いくつかのメリットがあります。
特に社会人受験生にとっては、次のような点がメリットになることが多いと思います。
理論科目に慣れることができる
財務諸表論は、計算問題だけでなく理論問題が出題される科目です。
理論問題では、会計基準や考え方について文章で説明する問題が出題されることがあります。
そのため、単純な計算問題とは違い、文章を書く試験形式に慣れる必要があります。
税理士試験では、税法科目は財務諸表論より理論の比重が大きいです。
そのため、財務諸表論で理論問題に慣れておくことは、後の科目にも役立つ可能性があります。
特に初めて理論科目を勉強する人にとっては、理論暗記や記述問題に慣れる経験になると思います。
税法科目の準備になる
税理士試験の税法科目は、基本的に理論問題が中心になります。
条文や制度の内容を覚え、それを文章で書く必要があるため、理論暗記の負担はかなり大きいです。
財務諸表論の理論は税法ほどの暗記量ではありませんが、それでも理論暗記の経験を積むことはできます。
そのため、財務諸表論で理論科目に慣れておくことで、将来の税法科目の勉強にもつながる可能性があります。
簿記論合格後なら負担が少ない
すでに簿記論に合格している場合、財務諸表論だけ受験するという戦略は取りやすくなります。
簿記論で学ぶ計算内容は、財務諸表論の計算問題にも多く登場します。
そのため、簿記論の知識がある状態であれば、財務諸表論の計算部分は比較的理解しやすいことが多いです。
税理士試験の学習ロードマップについては、次の記事でも解説しています。
簿記論に合格している場合は、財務諸表論を単体で受験するという戦略も現実的な選択肢になります。
財務諸表論だけ受験するデメリット
ここまで財務諸表論だけ受験するメリットを紹介しましたが、もちろんデメリットもあります。
特に多くの受験生が感じるのは、次の2つです。
- 簿記論の知識がないと計算理解が難しい
- 簿財同時受験の効率を使えない
財務諸表論だけ受験を考えている場合は、これらの点も理解したうえで受験戦略を考えることが大切です。
簿記論の知識がないと計算理解が難しい
財務諸表論には計算問題も出題されます。
ただし、計算問題の内容は簿記論で学ぶ内容と重複している部分が多く、簿記論の知識がある方が理解しやすいケースが多いです。
そのため、簿記論を勉強していない状態で財務諸表論だけ受験する場合、計算問題の理解に時間がかかる可能性があります。
逆に言えば、簿記論に合格している場合は、財務諸表論の計算部分は比較的スムーズに理解できることが多いです。
簿財同時受験の効率を使えない
簿記論と財務諸表論は出題範囲が重複している部分が多いため、同時に勉強した方が効率が良いと言われることが多いです。
簿記論で勉強した計算内容がそのまま財務諸表論にも出てくるため、同時に勉強することで理解が早くなることがあります。
そのため、財務諸表論だけ受験する場合は、この相乗効果を活かしにくくなるという点がデメリットになる可能性があります。
簿記論と財務諸表論の勉強順序については、次の記事でも解説しています。
財務諸表論だけ受験が向いている人
ここまでの内容を踏まえると、財務諸表論だけ受験が向いている人は次のような人だと思います。
- 簿記論にすでに合格している人
- 理論科目に慣れておきたい人
- 社会人で勉強時間が限られている人
特に簿記論に合格している場合は、財務諸表論の計算部分は理解しやすくなるため、単体受験でも対応しやすいケースが多いと思います。
また、税理士試験では理論科目が多いため、財務諸表論で理論暗記に慣れておくという考え方もあります。
財務諸表論だけ受験をおすすめしない人
一方で、次のような人には財務諸表論だけ受験はあまりおすすめできません。
- 簿記論をまだ勉強していない人
- 勉強時間を確保できる人
簿記論を勉強していない状態で財務諸表論から始めると、計算問題の理解に時間がかかる可能性があります。
また、勉強時間を十分に確保できる場合は、簿記論と財務諸表論を同時に勉強した方が効率が良いケースも多いです。
そのため、初学者の場合は簿記論と財務諸表論を同時に勉強するか、簿記論から先に勉強する方が一般的だと思います。
私は簿記論と財務諸表論を同時受験した
ここまで財務諸表論だけ受験するメリットやデメリットを紹介しましたが、私自身の受験経験についても少し書いておきます。
私は簿記論と財務諸表論を同時に受験しました。
税理士試験の勉強を始めたのは2024年3月でした。試験は8月なので、勉強開始時点では試験まで約5か月しかありませんでした。
そのため、最初は簿記論だけ受験することも考えていました。
実際は6月ごろから転職等により2024年の受験は断念し、2025年に2科目合格を目指すことにしました。
計算は簿記論の勉強でほぼ対応できた
簿記論と財務諸表論を同時に勉強して感じたのは、計算部分の多くは簿記論の勉強で対応できるということです。
財務諸表論にも計算問題は出題されますが、その多くは簿記論で学ぶ内容と重複しています。
そのため、簿記論の勉強が進んでくると、財務諸表論の計算問題も理解しやすくなっていきました。
実際、私は財務諸表論の計算対策として追加の問題集を解いたわけではなく、簿記論の勉強をベースにしていました。
財務諸表論では、表示や注記などの部分を中心に確認する程度でした。
簿記論と財務諸表論の勉強順序については、次の記事でも解説しています。
理論は4月から開始した
一方で大変だったのが理論です。
財務諸表論では理論問題が出題されるため、会計基準などの内容を暗記する必要があります。
私は理論の勉強を4月頃から始めましたが、直前期まで不安が残る状態でした。
理論は計算問題とは違い、短期間で覚えるのが難しい部分もあります。そのため、できればもう少し早くから勉強を始めておいた方が良かったと思います。
理論暗記は重いが税法よりは軽い
財務諸表論の理論は、暗記量が多いと感じる人もいると思います。
ただし、税理士試験の税法科目と比べると、財務諸表論の理論はそれほど重いものではありません。
そのため、理論科目の勉強に慣れるという意味では、財務諸表論はちょうどよい科目だと思います。
税法科目ではさらに多くの理論暗記が必要になるため、財務諸表論で理論暗記に慣れておくことは将来的に役立ちます。
財務諸表論だけ受験する場合の勉強戦略
財務諸表論だけ受験する場合でも、勉強の進め方を考えておくことは大切です。
特に社会人受験生の場合、勉強時間が限られていることが多いため、効率よく勉強を進める必要があります。
ここでは、財務諸表論だけ受験する場合の勉強戦略について紹介します。
理論の勉強は早めに始める
財務諸表論の最大の特徴は、理論問題が出題されることです。
理論問題では、会計基準などの内容を文章で書く必要があります。そのため、理論暗記にはある程度の時間が必要になります。
私の場合は4月頃から理論の勉強を始めましたが、直前期まで不安が残る状態でした。
そのため、財務諸表論だけ受験する場合は、できるだけ早めに理論の勉強を始めることをおすすめします。
簿記の基礎は理解しておく
財務諸表論には計算問題も出題されるため、計算問題の知識は必要になります。
簿記論を勉強していない場合でも、基本的な簿記の知識は理解しておく方が良いと思います。
簿記の基礎が理解できていると、財務諸表論の計算問題も理解しやすくなります。
まとめ
財務諸表論だけ受験すること自体は、受験戦略として十分ありだと思います。
特に次のような人には、財務諸表論だけ受験という選択肢も考えられます。
- 簿記論にすでに合格している人
- 理論科目に慣れておきたい人
- 社会人で勉強時間が限られている人
ただし、簿記論と財務諸表論は範囲が重複している部分が多いため、勉強時間を確保できるのであれば、同時受験した方が効率的なケースも多いと思います。
そのため、財務諸表論だけ受験するかどうかは、
- 勉強時間
- 仕事との両立
- 勉強の進み具合
などを考えて判断することが大切です。


